2022年の株主提案は以下のとおりです。
【その1】
第5号議案 定款の一部変更の件(1)
◆ 提案の内容◆
定款 第1章 総則に以下の条を新設する。
第1章 総則に以下の条を新設する。
(役員報酬等の個人別開示)
第6条 個人別の役員報酬及び賞与の金額を事業年度毎に公表する。
(以下の各条数については1条ずつ繰り下げる)
◆提案の理由◆
役員報酬の個別開示を求める議案は2004年以降総会でも度々提案し,毎回10%以上の賛同を得ている。一昨年の総会で,関西電力が役員各々の報酬額を開示したことに習って,本会社も開示すべきではないかとの質問に対し,「報酬については,経営に係るコストとして取締役及び監査役に対して支払われている報酬の総額を開示することが株主にとって重要であると考えている」との回答があった。
しかし,役員報酬はコストの問題だけでなく,経営判断や業績に対してどの役員がどのような役割・貢献をし,その額が相応しいものかどうかを知り,役員の適格性を判断するために必要な情報である。
内部の人間や当事者である社外取締役を構成員とする指名・報酬等検討会議の協議を経たとしても,お手盛り感は否めない。
上場企業の武田薬品工業は既に開示しており,複数の投資ファンドも役員報酬の個別開示の議案には原則的に賛成すると公にしているからである。
【その2】
第6号議案 定款の一部変更の件(2)
◆ 提案の内容◆
第2条(目的)第1号を以下のとおり変更する。
変更前:電気事業
変更後:電気事業(但し,原子力発電を除く)
◆提案の理由◆
本会社は現在,申請から8年かけても新規制基準の適合性審査を通らない浜岡原発にも毎年約1000億円の維持費をかけ,再稼働させる計画である。
しかし,原発で発電するメリットはほとんどない。むしろ危険な核物質を内包することによる地震災害のリスクに加え,有事には武力攻撃の標的になりうるという安全保障上のリスクも顕在化した。
また,一極集中電源のため地震等での大容量電源喪失の懸念は払拭できず,本会社が目指すレジリエンスの向上とは相容れない。温暖化対策としても,長期に及ぶバックエンドも含めたライフサイクルでのCO2収支では,実際の効果は不透明だ。発電コスト的にも優位性がなく,使用済み核燃料の処理費用の膨張や老朽化によるトラブル対応等で今後のコスト増は必至である。
本会社が電力会社として生き残るためには,原発という不良資産を処分し,身軽になって将来の経営環境の変化に柔軟に対応できるようにすべきである。
【その3】
第7号議案 定款の一部変更の件(3)
◆ 提案の内容◆
以下の章を新設する。
第◯章 コンプライアンスの徹底
第○条 本会社は,社会からの高い信頼と支持を得るため,コンプライアンスに則って行動する。特に以下の各号に違背することのない企業風土を醸成し,関連会社にもその姿勢を求めていく。
1.お客さま,取引先,地域の皆様には,公正・誠実に対応する。また,人権の尊重及び地球環境の保全には特に留意して業務を行うこととする。
2.情報開示に努め,説明責任を果たしていく。
3.個人の権利利益の保護を目的とする個人情報保護法の趣旨に則り,個人情報の収集,利用及び管理を,適正に行う。
4.政治・行政等との健全な関係の保持し,事業活動の適正さに疑いを招くような行動は行わない。
5.労働安全・衛生,および保安の確保・維持を徹底する。
◆ 提案の理由◆
「中部電力グループCSR宣言」によれば,個人情報を違法な手段で取得したり,提供することは許されないはずである。
2月21日,岐阜地方裁判所の判決で,岐阜県警察大垣署警備課による当社のグループ企業であるシーテック社に個人情報を提供した行為(=「意見交換」)が,違法かつ悪質と断罪された。裁判所が「信用性あり」と認定したシーテック社作成の「議事録」によれば,シーテック社側からも個人情報を警察に提供していた。これは個人情報取扱事業者としての責務に背く,違法行為である。しかもこの「意見交換」のシーテック社側の責任者は,当社から出向した社員であった。当社及びグループ企業が,警察の違法行為の相手方となり,同時に自らも違法行為を行っていたという裁判所の認定は重い。
かかる違法行為が繰り返されることがないよう,定款に定めることで,地域住民に信頼される企業へと自己変革を遂げていく姿を示すべきである。
【その4】
第8号議案 定款の一部変更の件(4)
◆ 提案の内容◆
以下の章を新設する。
第◯章 再生可能エネルギー
第◯条 本会社は,2030年までに再生可能エネルギーの主力電源化に最優先で取り組む。
但し,3年以内に発電設備の立地自治体の同意が得られなければ撤退する。
◆提案の理由◆
トヨタやソニーなどの大企業65社余りで100%再エネへの切り替えが具体化しつつある。中小企業や自治体でも昨年11月,200団体に達している。脱炭素が企業の競争力や成長につながる時代の表れである。
2021年経産省の2030年時点の発電コストの試算結果では,1キロワット時当たりの費用は,石炭火力が13円台後半に対し太陽光(事業用)が8円台前半〜11円台後半で最も安く,最安とされた原子力を下回った。問題の多い原子力発電や石炭火力からコスト面から考えても脱却すべきである。
ただし,環境や社会(人権問題への対応など)・ガバナンスの要素も考慮したESG投資が拡大し,世界の潮流となっている。当社も再生可能エネルギーの拡大を図るために立地住民の人権を尊重しなければ企業の持続可能性は損われる。よって3年以内に立地自治体の同意が得られなければ,その事業から撤退しなければならないと定める。
2021年の議案は以下の4件です。
1)定款変更(新設):原子浜岡原子力発電所の廃止
2)定款変更(新設):原子力災害避難計画検証委員会
3)定款変更(新設):使用済み核燃料
4)定款変更(新設):電源開発における倫理原則
1)定款変更(新設):原子浜岡原子力発電所の廃止
◆提案の内容◆
以下の章を新設する
第7章 浜岡原子力発電所の廃止
第45条 当社は,南海トラフ巨大地震の震源域に立地する浜岡原子力発電所
を再稼動することなく廃止する。
2 現存する使用済み核燃料は、地震・津波によっても安全性が損なわ
れないような設備で保管・管理する。
◆提案の理由◆
浜岡原発は,原子力規制委員会で新規制基準の適合性を審査中だが,7年を経ても合格できずにいる。
一方,規制委員会の安全審査も,他社の原発で基準地震動の審査に過誤欠落があると司法から指弾されるなど,安全の担保とはなりえない。
浜岡原発の基準地震動は,プレート間地震につき,東北地方太平洋沖地震の平均応力降下量を参考に,「南海トラフ巨大地震モデル検討会」で想定した断層モデルから,地震調査推進本部の強震動予測手法を使って策定されている。しかしこれでは,原発のような危険施設で考慮すべき最大の地震動とはならず,これを超える可能性は当検討会や地震本部も認めている。
しかも東北地震太平洋沖地震で観測された強いパルス状の強震動は,上記手法では再現できない。つまり現在の知見でも浜岡原発の基準地震動は過小評価なのである。
浜岡原発では他に敷地内の活断層の存在も指摘されており,安全性の確保は難しいので廃炉にすべきである。
・
2)定款変更(新設):原子力災害避難計画検証委員会
◆提案の内容◆
以下の章を新設する
第8章 原子力災害避難計画検証委員会
第46条 当社は、自治体が策定する原子力災害時の避難計画について、
過酷な自然条件及び感染症流行時にも対応できる実効性を確保
するため、住民、関係する事業者及び専門家等広く知見を集めて
検証する「原子力災害避難計画検証委員会」を設ける。
2 実効性のある避難計画の策定が未整備の原子力発電所は稼働しない。
◆提案の理由◆
原発の周辺自治体では原子力災害広域避難計画の拡充が進められているが,その実効性については検証する場がない。避難計画は,IAEA等国際的には防護レベル第5層として原発運転の条件とされているにも拘らず,日本の原子力規制委員会は平時を想定した指針のみを定め,避難計画は安全審査の対象外である。
浜岡原発では,南海トラフ巨大地震と原子力災害の同時発生も懸念され,避難経路の確保や屋内退避での被ばく防護は困難が予想される。
さらに新型コロナウィルス等感染症への対策も新たな課題となった。移動中や避難所では放射能の侵入防止と三密の回避という難しい対応が要求され,避難者のスクリーニングだけでなく感染者の分離という作業も加わり,自治体の負担は増す一方である。
原発事故・自然災害・感染症の同時発生に備えた実効性のある避難計画にするためには,広く知見を集めた検証が必要だ。当社は原発事業者の責任として当検証委員会を設ける。
・
3)定款変更(新設):使用済み核燃料
◆提案の内容◆
以下の章を新設する。
第9章 使用済み核燃料
第47条 本会社は、核燃料サイクルの実現が見込めないため使用済み核燃料
の活用を行わない。
◆提案の理由◆
取締役会の意見では度々「エネルギー資源の乏しい我が国において,原子力を引き続き重要な電源として活用する」と書いているが,現実を直視していない。
核燃料サイクルは既に破綻している。高速増殖炉もんじゅは1兆円も費用をかけたが,1kwhも送電できず廃炉となった。六ヶ所再処理工場も当初建設費は七千六百億円とされ,1993年に着工し 97年には完成予定だったが,トラブル続きで24年間も竣工が遅れ,ほぼ3兆円の建設費となっても未完成。しかも放射性廃液のガラス固化技術の欠陥で早晩目詰まりを起こし止まる可能性が高い。
「準国産」のエネルギーと言うには,100%輸入のウラン資源が枯渇しても,使用済み核燃料を国内で再処理してプルトニウムを取り出し,それを使って発電できることが前提だ。核燃料サイクルが成り立たなければ,原子力を引き続き重要な電源として活用することはできない。
使用済み核燃料は廃棄物として扱うべきである。
・
4)定款変更(新設):電源開発における倫理原則
◆提案の内容◆
以下の章を新設する。
第10章 電源開発における倫理原則
第48章 当社は,電源開発において守るべき次の倫理原則を定め、
グループ企業も含めてこれを徹底する。
(1)立地地域の住民の合意が得られない限り事業を進めない。
住民の反対がある場合は、合意を得るまで誠意を尽くして
対応するが、理解が得られない場合は、速やかに計画を撤回する。
(2)10年以上休止中の電源施設の再稼動についても同様とする。
◆提案の理由◆
当社には,かつての電源開発にあたり,住民の強い反対の声がありながら,強引に事業を進めてきた歴史がある。芦浜原発計画がその典型である。
現在は,子会社に移管されたり,子会社等が保有する発電所もあるが,当社に電力を供給する子会社が進める事業の中には,実際にメガソーラーや風力発電所の開発で住民から強い反対の声が上がっているものがある。これは,地域との共生をめざし,消費者に選ばれるために努力している当企業グループのブランドイメージを損なうものであり,親会社としても改善を要する問題だ。
そのため,定款で電源開発における倫理原則を定めることとし,グループ企業全体でこれを共有し実践する。
また,10年以上休止している浜岡原発についても新たな電源と同様に,住民の理解が得られない場合は,再稼動計画を速やかに撤回しなければならない。 強引な事業推進は,地域に混乱とあつれきをもたらすおそれがあるので,慎むべきである。
今年の中部電力の株主総会は、次の日程で行われます。
2020年6月25日(木)午前10時から
名古屋市東区東桜2ー6ー30 東桜(ひがしさくら)会館
詳しくは→ https://www.chuden.co.jp/ir/ir_kabunushi/ir_sokai/
新型コロナウィルス感染防止対策として座席数が例年より減っていますので、早めに受付を済ませて入場ください。
今年の株主提案は以下の5件です。
2020年(第96期)の脱原発 株主提案
(2019年4月~2020年3月期)
【その1】
第5号議案 定款一部変更の件(1)
◆提案の内容◆ 以下の章を新設する。
第7章 原子力発電事業からの撤退
第45条 本会社は,消費者が求める安全で持続可能な電力を供給するため,
_____原子力発電事業から撤退する。
◆提案の理由◆
2つの理由から原発からの撤退を提案する。
第1は,料金収入を確保するため,消費者の新電力への切り替えを抑えること。
低圧分野での中部電力からの切り替えは東京電力や関西電力よりも少ないが,逃げている理由は,原発をやめよう,という庶民の考え方・ 世論であり,それに従うことが必要である。経済活動が縮小する中, 低圧の顧客は重要だ。
第2は,どちらがコストダウンか,の選択である。
龍谷大学の大島堅一教授に依頼し,本会社が公表している資料から分析してもらったところ,現状の原発稼働準備中に比べ,稼働すれば火力発電の燃料費の削減で年100億円のコストダウン,一方原発から撤退を決断すれば維持費が下がり,年120億円の削減になるという結果が出た。 原発を維持するコストがいかに高いのかを物語っている。
以上,原発から撤退するという経営陣の英断を期待する。
【その2】
第6号議案 定款の一部変更の件(2)
◆提案の内容◆ 以下の章を新設する。
第8章 出資及び債務保証
第46条 本会社は,経営破綻リスクが高い日本原子力発電株式会社への出資
_____及び債務保証を行わない。
◆提案の理由◆
当社は日本原子力発電(原電)に対し,約181億円の出資と200億円の債務保証をしている。更に原電の敦賀原発からは全く受電していないにも関わらず,毎年維持管理費を支払い続け,その額は過去7年間だけで1500億円以上に上る。
敦賀原発1号機は廃炉となり,2号機については直下の活断層の存在に加えて,原子力規制委員会での新規制基準適合性審査で地質の生データを改ざんするという不正を行い,委員から厳しく指弾された。敦賀2号機の再稼動は絶望的である。
原電は,東海第二原発の安全対策費すら自力で調達できず,他の電力会社に3500億円の支援を要請した。当社も昨年支援を決定したが,この判断は誤りである。
老朽炉でもある東海第二原発は,再稼動に必要な地元住民や周辺自治体の同意を得られる見込みがない。
発電できない原電の経営破綻は時間の問題である。当社の損失を避けるために,契約を見直し,出資・債務保証をやめるべきである。
【その3】
第7号議案 定款の一部変更の件(3)
◆提案の内容◆ 以下の章を新設する。
第9章 受電見込みのない他社原子力発電所からの受電契約
第47条 今後受電が見込めない次の発電所との受給契約は解消する。
(1) 北陸電力 志賀原子力発電所2号機
(2) 日本原子力発電 敦賀原子力発電所
2 上記原発設備の維持管理と再稼動のための支出を中止し,廃止措置のための
___費用については,関西電力,北陸電力等関係事業者と協議の上応分の負担を
___していく。
◆提案の理由◆
本会社は,北陸電力志賀原発2号機について,2006年の運転開始から最大約26万kWの電力を受電する契約を結んでいる。しかし,2011年以降全く受電していないにも関わらず,日本原電の敦賀発電所と同様,毎年100億円単位の維持管理費等を支払い続けている。
志賀原発2号機は敷地内に複数の断層があるが,その活動性を否定するデータを示すことができず,新規制基準適合性審査に合格する見通しが立たない状況である。これ以上延々と再稼動を前提とした維持管理費を負担し続けても無駄になる可能性が高い。合理的に判断すれば,これら原発との受給契約は直ちに解消すべきである。
ただ,志賀原発2号機は運開後間もなくタービントラブルで長期停止する等,設備利用率が極めて低く,廃止措置のための費用の積立てが不足するため,同様に受給契約を結んでいる関西電力と北陸電力の3者で協議の上,安全性を最優先に応分の負担をすることとする。
【その4】
第8号議案 定款の一部変更の件(4)
◆提案の内容◆ 以下の章を新設する。
第10章 プルトニウムの分離・抽出,使用及び他者への売却・譲渡
第48条 本会社は,使用済み核燃料からのプルトニウムの分離・抽出を行わない。
2 再処理で分離・抽出したプルトニウムを加工したMOX燃料は使用しない。
3 既に分離・抽出したプルトニウムを他者に売却又は譲渡してはならない。
◆提案の理由◆
本会社が保有する核分裂性プルトニウムは,MOX燃料として加工し浜岡原発4号機と電源開発(株)の大間原発で消費する計画である。
しかし2原発の再稼動は不確定である上,軽水炉でのプルトニウム燃料利用は技術的にも経済的にも全くメリットがない。値段が高いことに加え,使用済みとなったMOX燃料の処理方法には具体的計画もなく,発熱量が高いため乾式貯蔵するにも百年単位の時間がかかる。トラブル続きの再処理事業と同様,今後もコストが膨張していくのは必然だ。
六ケ所再処理工場は竣工時期が23年も遅れ,建設費は4倍に増大して,既に事業費は約14兆円。高速増殖炉計画の頓挫で核燃料サイクル政策は既に破綻したのに,プルトニウムの抽出・利用に拘泥していては,エネルギー情勢の変化に対応できない。再処理の中止には合理性があり,現存するプルトニウムについては,安全且つ軍事転用が不可能な形で長期保管管理する方法を検討すべきである。
【その5】
第10号議案 定款の一部変更の件(5)
◆提案の内容◆ 以下の章を新設する。
第11章 石炭火力発電からの電力調達
第49条 本会社は,地球温暖化の原因とされる二酸化炭素排出量が多い石炭火力
_____発電による電力を調達しない。
◆提案の理由◆
世界の平均気温が産業革命から1℃上昇しただけで,巨大化した台風や大規模森林火災など各地で自然災害が多発している。
地球温暖化問題は「気候変動」から「気候危機」になった。
2015年のパリ協定では気温上昇1.5~2℃を目標としていたが,これでは全く足りず,現在では多くの国が1.5℃未満を目標としている。
今後10年で大幅なCO2の削減がなければ2030年には1.5℃に達し,その後3℃以上の上昇になってしまうからだ。
日本の最大のCO2排出源は石炭火力発電所である。最新鋭の高効率の発電所でも,天然ガス発電の2倍の排出量がある。
当社関連の(株)JERAの武豊5号は107万kW の大規模発電所であり,年間CO2排出量は569万t。これは50~100万人の1年間の排出量に相当する。
石炭火力発電所からの電力調達は「地球環境の保全に努めます」とうたう当社のコンプライアンス基本方針に反することから,これを止める。
2019年(第95期)の脱原発 株主提案
(2018年4月~2019年3月期)
第7号議案 定款一部変更の件(1)
◆提案の内容
第32条(取締役の責任免除)第1項を以下のとおり変更する。
<変更前>
(取締役の責任免除)
第32条 本会社は,会社法第426条第1項の規定により,任務を怠ったことによる取締役(取締役であった者を含む。)の損害賠償責任を,法令の限度において,取締役会の決議をもって免除することができる。
<変更後>
(取締役の責任免除)
第32条 本会社は,会社法第426条第1項の規定により,任務を怠ったことによる取締役(取締役であった者を含む。)の損害賠償責任を,法令の限度において,取締役会の決議をもって免除することができる。ただし、社会的に批判が多い原子力発電に関する事項で任務を怠ったことにより生じた損害賠償責任については除く。
◆提案の理由
福島原発事故を起こした東京電力の当時の取締役3名が被告となり、事故の責任をめぐって株主代表訴訟と刑事裁判が争われている。震災前から設計を越える津波が福島原発に到来する可能性があることが国の機関や専門家からも指摘され、3年前には社内でも対策工事を行う話が進んでいたにも関わらず、裁判の中で元取締役らは「想定を超えた津波だった」「部下に任せていて知らなかった」「権限がない」等と明らかに虚偽の証言をし、責任逃れに終始した。彼らが通常の安全感覚を持ち、やるべき任務を怠っていなければ、これ程多くの被害も損害も出すことはなかったであろう。
本会社の原子力事業にも安全上、経営上のリスクがあることは株主として総会でも縷縷説明してきた。それでも敢えて原子力事業を続ける判断をするのであれば、その責任を全うする覚悟がなければならない。脱原発議案に反対する取締役会の決議だけで責任を免除することは認められない。
第8号議案 定款一部変更の件(2)
◆提案の内容
以下の章を新設する。
第7章 脱原子力発電
第45条 本会社は、再稼動の見込みのない浜岡原子力発電所を廃止し、他社の原子
力発電に関する出資、債務保証を中止する。
◆提案の理由
浜岡原発は申請から5年を費やしても新規制基準の審査に合格する目処が立たない。約4千億円の対策工事を実施してきたにも関わらず、南海トラフ巨大地震での津波想定については、原子力規制委員からも更に厳しい条件設定を求められ、再び防波壁の嵩上げを検討せざるをえなくなった。
そもそも浜岡原発は、直下地震での上下方向の揺れの想定が甘すぎ、耐震性に懸念がある。
たとえ審査に通っても、地元住民の反対は根強く、再稼動できる見込みは薄い。
一方、本会社は日本原電と北陸電力に対して、発電できない原発の維持費を毎年数百億円も支払い続けている。
発電もせず維持費・工事費が嵩む原発は、会社の経営にとって重荷でしかない。
浜岡原発の廃炉を発表すれば株価は上がる。それを日立が実証した。日立の株価は昨年末2800円だったが、英国の原発から撤退を発表して一時は3500円、3月も3100円と1割以上も高い。
故に原発からは撤退すべきである。
第9号議案 定款一部変更の件(3)
◆提案の内容
以下の章を新設する。
第8章 使用済み燃料及び高レベル放射性廃棄物
第46条 本会社は搬出先が確定していない使用済み燃料及び高レベル放射性廃棄物
の排出を禁止する。
◆提案の理由
高速増殖炉「もんじゅ」は1兆円以上の費用をかけたが、ほとんど動かすことなく廃炉となった。
六ヶ所再処理工場も完成予定が既に22年も遅れ、その間、当初7600億円とされていた建設費は約3兆円に膨んでいる。
核燃料サイクルは実現性、経済性、合理性が無く既に破たんしている。
使用済み核燃料、特に使用済みMOX燃料は、たとえ中間貯蔵できても政治的、技術的問題等で再処理できず、行き場を失う可能性が大きい。
さらに、再処理した後に出る高レベル放射性廃棄物の処分場については目途さえ立たない状況である。
瑞浪超深地層研究所は処分のための研究施設であるが、地元首長の強い意志により2022年1月までに埋め戻しされることが決められた。研究所であってもその存在が、住民にとっては不安に通じるからである。
数十万年もの間、隔離しなければならない猛毒な放射性物質を処理、処分の目途もなく排出するのは企業倫理に反する行為である。
2018年(第94期)の脱原発 株主提案
(2017年4月~2018年3月期)
【その1】
第6号議案 定款一部変更の件(1)
◆提案の内容
第31条を以下のとおり変更する。
<変更前>
(相談役及び顧問)
第31条 本会社は,取締役会の決議をもって,相談役及び顧問若干人を置くことができる。
<変更後>
(相談役,顧問及び参与)
第31条 本会社は,経営の透明性を確保するため,相談役,顧問及び参与の役職を廃止する。
◆提案の理由
本会社では,昨年6月現在,取締役経験者等が相談役に1名,顧問に5名選任されている。この他に参与が3名置かれているという。株主の信任を得ることもなく,報酬額も非公開でありながら経営に影響力を及ぼす可能性のあるこれら役職については,経営の透明性という点からも近年問題となっている。資生堂や伊藤忠商事,カゴメ,JT,日清紡等,既にこれらの役職の廃止を決めた企業も相次ぎ,東京証券取引所でも今年から業務内容や報酬の有無についての報告が求められるようになった。
本会社においても,電気・ガスの自由化と国内電力需要の縮小等で経営環境が急激に変化し厳しさを増す中で,より一層の国際化とイノベーションが求められる現在,院政とも揶揄される相談役・顧問や,あえて参与の肩書きで出向する役職を置く必要性は見出せない。取締役の員数を30名余から段階的に12名にまで減らしてきた意味も薄れる。
これらの役職は廃止すべきである。
【その2】
第7号議案 定款一部変更の件(2)
◆提案の内容
以下の章を新設する。
第○章 原発事故緊急時避難対策
第○条 原発事故緊急時避難対策を目的として,周辺自治体,企業,病院,介護施設等と連携して,常設の地域協議会を設置する。
◆提案の理由
浜岡原発はM9クラスと想定される南海トラフ巨大地震の想定震源域に立地しており,事故を起こせば,半径31km圏の緊急防護措置区域(UPZ)内約95万人の避難が必要となり,圏内を横切る東名高速,東海道新幹線も大打撃を受ける。
これに対し,静岡県が策定の広域避難計画は,避難先や避難経路,輸送手段などが具体的に決まっておらず,地元住民からは「大渋滞や大量被曝が起きるのでは」と,その実効性について不安の声が上がっている。他方,中部電力では東京電力福島第1原発事故を受けて,重大事故への対応力強化を目的に年2回緊急事態対策訓練などの総合訓練を行っている。
しかしながら,どんなに最新の知見に基づく最高の訓練を行なっても,必ず「想定外」のことが起きる。迫り来る南海トラフ大地震に備え,早期にシビアアクシデント(苛酷事故)を想定した万全の避難対策を講ずることは,公益企業である本会社の喫緊の重要課題である。
【その3】
第8号議案 定款一部変更の件(3)
◆提案の内容
以下の章を新設する。
第○章 広域原子力災害対策
第○条 本会社は,原子力事業者として浜岡原子力発電所の重大事故に備え,希望する者に対しては,安定ヨウ素剤の無償提供と服用に関する説明を受ける機会を保証する。
◆提案の理由
福島原発事故後,小児甲状腺ガン及び疑いのある子どもの数は,福島県内だけで少なくとも196人となった。100万人に3人程度と言われるガンが,38万人の調査でその数十倍の発症率である。検査は既に3巡目が終わり,スクリーニング効果説では説明できず,過剰診断説も,リンパ節転移など重症な患者も多く,手術を執刀した医師も否定している。
しかも患者は福島県内に留まらない。安定ヨウ素剤が適切に服用されていれば,これほどの多発は防げた可能性がある。
現在,浜岡原発では周辺5km圏について安定ヨウ素剤が事前配布,30km圏では備蓄されているが,緊急時には備蓄では間に合わず,また放射性ヨウ素がそれ以上拡散しないという保証もない。 ベルギーでは最近,原発から100km圏の住民に安定ヨウ素剤を事前配布した。
本会社は,原子力災害に対して事業者として万全の対策をとる責務があり,住民の被曝防護対策も行政任せにしてはならない。
【その4】
第9号議案 定款一部変更の件(4)
◆提案の内容
以下の章を新設する。
第○章 再生可能エネルギーの優先接続
第○条 本会社は,電力ネットワークカンパニーにおける送電線の運用において,
再生可能エネルギーにより発電された電力の接続を優先する。
◆提案の理由
電力自由化に伴う送配電事業の分社化に向けて,本会社もカンパニー制を導入しているが,電力系統のルールの透明性,公平性,効率性については,現在経済産業省や関連業界の中でも改善の必要性が議論となっている。
固定価格買取制度により,再生可能エネルギー(再エネ)による発電量が,特に太陽光発電等で大幅に増えている。一方で大手電力の保有する送電網の空き容量が過少に見積もられ,他電力管内では再エネの接続制限が発生するという問題も発生した。本会社の送電線も,実際は平均利用率や混雑発生路線割合が低いにもかかわらず,空き容量がゼロとして公表されている路線が他社に比べても多い。これでは保有する設備が有効に活用されず,送電線増強費用の負担が増え,再エネの大量導入の足かせにもなりかねない。
稼働が見込めない原発等をベースロードにするのではなく,欧州や米国を見習い,再エネを優先的に接続できるような運用にしていく必要がある。
【その5】
第10号議案 定款一部変更の件(5)
◆提案の内容
以下の章を新設する。
第○章 核燃料再処理事業からの撤退
第○条 本会社は,実現性,採算性が見込めない再処理事業から撤退する。
この目的を果たすため,次のことを行う。
1 日本原燃株式会社への出資及び債務保証の解消
2 原子力環境整備促進・資金管理センターに積み立てている再処理等積立金の返還請求
◆提案の理由
本会社が核燃料再処理を委託する日本原燃株式会社は,昨年末,トラブルが相次ぐ再処理工場の竣工を更に3年延期すると発表した。24回目の延期である。既に当初予定から20年以上も完成が遅れ,建設費も当初の4倍近くの2兆9千億円に膨らんでいる。再処理工場の現状は,私たちが最初から指摘している通りである。
ガラス固化施設の技術的問題は根本的に解決されておらず,工事や保安検査体制のズザンさだけでなく,施設の老朽化も懸念される中で,たとえ操業にこぎ着けたとしても,今後も費用の膨張は避けられない。施設直下には,巨大活断層の存在も指摘されている。
本会社は,日本原燃に対して603億円の出資を行い,既に東京電力と日本原電が取り止めた多額の債務保証もまだ行っている。本会社を含む他の大手電力会社は,見返りに保証料をとることにしたようだが,事業のリスクはカバーできない。
再処理事業と日本原燃からは早急に手を引くべきである。
今年の株主総会は以下のとおりです。
と き:6月28日(水)10時から14時半ごろ
(アピール行動は午前9時~10時まで)
ところ:中部電力「東桜会館」(地下鉄「高岳」or「新栄」徒歩5分)
地図 http://yahoo.jp/LvaqU7
★中部電力 第93期定時株主総会
http://www.chuden.co.jp/corporate/ir/ir_sokai/index.html
第93期定時株主総会招集ご通知
http://www.chuden.co.jp/resource/corporate/ir_sokai_93_01.pdf
★今年の株主提案(4件)
http://bit.ly/2rTB7Nn
◆静岡新聞(2017/6/20 17:05)
使用済み核燃料「徹底管理」 牧之原市長、議案賛成意向
http://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/hamaoka/372127.h
tml
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2016年6月19日
第92期中部電力株主総会 事前質問書
1.発電コスト
1)当社の2015年度の主要電源別の発電コストを聞きたい。
なお、水力は一般水力と揚水に分けて示してほしい。
2)今期及び第91期の揚水発電所の設備利用率について、発電所ごとに明らかにされたい。
2.温室効果ガスの排出
1)当社の2015年度の二酸化炭素総排出量、および、その1990年度比の増減はどれだけか。
2)当社の2015年度の二酸化炭素排出実績を、二酸化炭素排出削減に関するこれまでの当社の言明との関連でどのように評価しているか。
3)計画されている出力100万kwの武豊石炭火力が稼働した場合、年間の二酸化炭素排出量は、ほぼ同出力の上越火力2号系列(LNGコンバインドサイクル。出力115万kw)の排出量の約2倍になる(稼働率80%で)とされているが、二酸化炭素排出削減に失敗し続けている当社が二酸化炭素を大量に排出する石炭火力を新設することは、社会的に許されないのではないか。
4)上記に関連して、CCS実用化についてどのような見通しを持っているか。
5) 2050年までに温室効果ガスを2005年比で80%(2013年比で81%)削減するという政府目標を、当社はどう受け止めているか。とりわけ、電源構成の面でどのような事態が生じることになると予測しているか。付言すれば、2025年頃に運転開始する発電施設は、2050年にも稼働している可能性が高いから、2050年問題は遠い将来の話ではないのである。
3.浜岡原子力発電の安全性
1)「防波壁の耐震性についての計算書」に関する質問:
①壁高16mの上部構造(たて壁・鋼殻)について 、鋼材の評価基準値(降伏点)355(N/mm2) 、引張の発生値217(N/mm2)と、基準値の61%になっている。通常の構造物設計では許されない安全率の低さである。
専門家のあいだでは「津波の高さの精度は”倍半分”」といわれ、2倍の誤差がありうる、というのが常識である。発生値が1.7倍 になれば、防波壁は崩壊することになるが、それを可とするのか 見解をお聞きしたい。
東京電力の柏崎刈羽原発の防潮堤の波力の計算書では、防潮堤の頂上までの高さを「設計水浸深さ」としてその3倍の水深の静水圧を津波の波圧としている。したがって浜岡の防波壁の2倍の波圧で計算している。なぜ中電は波圧を過小評価しているのか。
②浜岡原発の防波壁の高さの設定については、国の南海トラフ巨大地震の津波想定19mを基に22mとしているが、22mは津波のせき上がりを考慮した設定なのか。静岡県の担当者に国の南海トラフ巨大地震の津波想定について確認したところ、御前崎で最大19mとの津波想定は、30m沖合での高さで、その地点までの地形等は考慮されているとのことだった。沖合30mから砂丘を経て防波壁に津波がせき上がる高さを最大3mに収まると評価したのか?
③液状化について:「日本の液状化履歴マップ 745−2008」(東京大学出版会)によると、遠州灘に面した浜岡原発の周辺は、「過去に液状化した場所であり、将来も液状化の恐れのある場所」とされています。
貴社は浜岡は液状化しないと主張されていますが、その考えが誤りであると認めますか。
④地盤の隆起について:先の株主総会の貴社の回答では「敷地内の隆起は、広い範囲に一様に生じるため、その傾斜は非常になだらかであるから、防波壁は破壊されない」というものでした。この説は従来からの国の考えを踏襲したものに過ぎません。中越沖地震によって柏崎刈羽原発では地盤の隆起は敷地内で、一様ではない隆起が起きています。1号機~7号機の原子炉建屋、タービン建屋では 58.9ミリ~118ミリという不均一な隆起が起きています。この事実を貴社はどう考えているのか。見解を示してください。
また、最近の調査では、浜岡原発から東2キロの地点で、過去に2.7メートル、2.8メートル、1.6メートルの隆起の痕跡が確認されています(産業技術研究所2004年)。
この事実を貴社はどう考えているのか、ご見解を示してください。
⑤当社が2007年に国に提出したバックチェックのための報告書では、浜岡原発の前面砂丘の安定性について、「地震時において砂丘の一部にすべりが生じて標高は低下する可能性がある」としているが、新たな基準地震動を想定すると前面砂丘の崩壊は更に大きくなる可能性があるのではないか。
また、南海トラフ巨大地震で想定される津波高さを想定した津波による前面砂丘浸食については評価しているのか。
⑥防波壁の基礎は、岩盤とされている相良層に根入れしているとのことであるが、防波壁の近傍の表層地盤が津波で浸食されたり、強い地震の揺れで地滑りを起こしたり、サブドレンの故障などによる地下水位の上昇等で液状化して地盤沈下する可能性はないのか。
⑦防波壁を設置した敷地について、地盤改良などは行っているか。いるとすればそれはどのような工法か。
2)重大事事故対策(フィルタベント)について:
①柏崎刈羽原発では、重大事故対策として設置が義務づけられたフィルタベントを2系統にして、片方の系統にトラブルが起きた場合のバックアップとしているが、浜岡原発3、4、5号機については、二重化する必要はないのか。柏崎では必要とされたものが、浜岡では不必要である理由は何か。
②柏崎刈羽原発よりも浜岡原発のほうが、原子炉設置位置の地震動の条件が厳しいと思われるが、耐圧ベントを分岐させてもう一系統フィルタベントを設置することは技術的には可能なのではないのか。当社でできない理由が何かあるのか。
③今の対策では、唯一の系統のどこかに漏洩があった場合は、フィルタを通さずに外部に放射性物質を排出することになり、周囲の環境だけでなく発電所敷地内の環境を汚染することになるが、それでよいのか。
④浜岡原発3、4、5号機に設置した(する)フィルタベントには、ヨウ素フィルタは付けられているのか。付けられていないとすればそれはなぜか。
⑤ヨウ素フィルタで除去できる気体状のヨウ素は、全ヨウ素の何%と見込めるか。また、ヨウ素フィルターを付けることによる効果についての見解をうかがいたい。
⑥ 滝谷紘一氏(元原子力安全委員会事務局技術参与)の試算によれば、フィルタベントで捕捉できない希ガス放出による敷地境界での被ばく線量は、最も厳しいケースとして事故前に炉心に蓄積されていた全量が格納容器内に出てきた後にベント操作により排気筒から放出されることを想定し、蓄積量100%が放出された場合、浜岡原発5号機の敷地境界では、30日間で約37シーベルト(全身被ばく線量)になるということである(岩波「科学」2013年6月号)。
浜岡原発3、4号機のフィルタベント運用において、それぞれ希ガス全量放出の場合の敷地境界での被ばく線量は何シーベルトと評価しているのか?また、3、4号機が同時期にフィルタベントを行った場合の被ばく線量の数値は何シーベルトか?
3)重大事事故対策(水素管理)について
①重大事故に至った場合の水素発生量は、通常の何桁も増加すると思われるが、水素濃度の管理は、濃度計の増設だけではなく、除去する設備が必要である。その対策は、建屋から水素を放出する対策のほかにはないのか。他に水素爆発対策として強化した設備はどういうものがあるか。
②当社の説明では、「水素濃度計の設置の他、原子炉建屋の水素爆発を防ぐため、水素濃度計の設置や建屋から水素を排出する対策を実施します。水素を排出する際に放射性物質の拡散を抑えるため、建屋に放水して放射性物質を地上に落とす放水砲を配備します。」とあるが、排出する水素を放水砲で地上に落とす対策で、放射性物質のどの核種が何%程度地上に落とせるのか。またそれを実証する実験データはあるのか。
③放水砲で放射性物質を地上にたたき落とすことになれば、敷地が汚染し、原発作業員の作業環境が悪化すると思われるが、それは容認するという対策でよいのか。事故収束作業に影響が出るよりも敷地外への漏洩を防ぐことを優先するということか。
④水素管理による意図的な水素の排出以外にも、格納容器の損傷などにより、放射性物質が建屋の外に放出された場合も、放水砲による放水での対応が想定されているが、この場合の放出放射能の核種と放水による放射能拡散低減効果について実証されたデータを明らかにしてほしい。
4)重大事故対策(その他)
当社は浜岡原発の再稼働を目指しているが、原発にはサイト外への大量の放射性物質放散を伴う過酷事故が発生する危険性がある。そうである以上、会社にはそれに備えておく義務がある。その備えの一つとして決死隊の準備がある。過酷事故が起きれば、事故拡大抑止のために大量被曝を覚悟で作業することが必要な状況が生じうるからである。そういう作業を命令する覚悟、そういう命令に従う覚悟がなければ、原発を運転すべきでないことは自明である。
以上のことを前提にして、
① 当社にはいざという場合に決死隊を使う覚悟はあるのか。
② いざという場合に決死隊を使うには事前の(過酷事故発生以前からの)十分な準備が必要だが、当社ではそれは現在においてどのように行われているのか。またこれからどのように行う予定か。
③「緊急時即応班」の要員については、そうした大量被曝を前提とした訓練も行われているのか。それとも、初期対応だけの要員で、被曝については特にほかの作業とは変わらない作業を想定しているのか。
④「緊急時即応班」について公表されている人数は、浜岡の全プラントに対応した人数なのか。
⑤津波対策と内部溢水対策である水密扉について:水密扉の設置箇所は3、4、5号機でそれぞれ何カ所あるか。
⑥水密扉の開閉は、すべて自動化されているのか。自動化されていない場合、その理由は何か。
5)緊急時海水取水ポンプ
①各号機の取水層と緊急時海水取水ポンプ用の地下取水槽をつなぐトンネルの標高は何メートルか。
②取水槽との連結トンネルのから取水が途絶えた場合、緊急時海水取水ポンプが取水層するための水槽の海水貯蔵容量は何トンか。
③またそれは何分間の海水取水に相当する量か。
6)乾式貯蔵、乾式キャスク
①浜岡原発で建設予定の乾式貯蔵施設で使用する乾式キャスクの耐用年数は何年か?また、それは潮風による腐食を安全側に考慮しての評価か?
②容器のふたのシール材(金属ガスケット)については耐用年数は何年か?また、それは潮風による腐食を安全側に考慮しての評価か?
③同乾式貯蔵施設には使用済み燃料を詰め替えるためのプールは計画されておらず、広報担当者によれば、乾式キャスクに問題が生じた場合は各原子炉に併設されている使用済み燃料プールに運んで交換するとのことだった。つまり、各原子炉に併設されている使用済み燃料プールは、乾式貯蔵した使用済み燃料のトラブルに備えて、一定程度の空きを設けておくということか。それはどのくらいか。
4.浜岡原発5号機の問題
1)5号機の圧力容器の錆についての質問
①2011年5月の海水侵入のよって圧力容器の中にも錆が発生した。最大の問題は、圧力容器の内張り材(ステンレス4mm)と圧力容器本体の隙間に海水が侵入し、本体が腐食しているのではないかである。
昨年12月の中電の報告によると、錆は内張り材と母材の境界にまで到達しているという。報告書によると、「圧力容器の外側からの超音波探傷試験によると、母材の必要厚さを満足している」とあるが、超音波という信頼性の低い検査方法であり、しかも母材の全面積を検査しているわけではない。この見解は信用できない。スキマ腐食という除去が難しい問題を完全に解決するのは不可能である。圧力容器を新品と取り替えるか、原子炉を廃炉にするかしかないだろう。中電は早期に決断をすべきである。中電の見解をお聞きしたい。
②浜岡原発の5号機は400トンの海水の流入によって、原子炉圧力容器にも 海水が入り腐食が広がっています。ステンレスの内張りだけでなく、 容器本体も腐食している可能性があると思います。貴社は「本体は腐食していない」との見解のようですが、超音波探傷器では検査できない箇所があると思いますが、圧力容器の内面全体をくまなく、どのような方法で腐食検査をして、「本体は腐食はしていない」と判断したのですか。検査の方法を教えてください。
ステンレスの内張り板と圧力容器本体の隙間に海水が入り容器の鋼鉄部を腐食させているはずです。これを隙間腐食といいます。それによって圧力容器の本体は設計時の板厚を保持していないことになります。この隙間腐食について貴社の見解をお聞きしたい。
2)駿河湾地震の影響
①浜岡原発5号機は、2009年駿河湾の地震により、一部の周期で基準地震動S1(弾性設計)の応答加速度を超えた。5号機の設備健全性評価の中では、「耐震設計上重要な機器・配管系」として8つの部位についての評価結果が出ているが、耐震Sクラスの機器はこれ以外にもあるはずである。固有周期0.4秒付近にあるSクラスの設備は皆無であったのか。
②Sクラス以外の設備では弾性限界を超え、取り替えた設備があるのではないか。あるとすればそれは何か。ホームページで公表されていないものについて、主なものを明らかにされたい。
③原子炉機器冷却水系配管については、S1に対する応答値の比が1.09と1を超えたが、詳細計算で弾性設計範囲であったと結論づけた。
この地震の揺れ(1回)による、疲労破壊の許容値に対する疲労累積係数の比率を明らかにされたい。
また5号機の通常運転による現在までの疲労累積係数はいくらと見積もっているか。
④原子炉機器冷却水系配管では、弾性限界の許容値に対して、M6.5の駿河湾地震の揺れによる応答値は約70%であった。新たに引き上げた2000ガルというSsの揺れになれば、この部位は弾性限界の許容値を大幅に超え塑性変形に至ると思われる。引き上げた基準地震動に対応するための対策とはどのようなものか。
5.徳山水力発電所の事業費について
1)6月8日、当社は徳山水力発電所の完工式を行った。
この事業の事業費につき、「発電原価にかかわるデータの公表は他者との競争で不利益になる恐れがある」として公表していない。しかしこの発電所は、多大な税金を投入して作られた徳山ダムに依存している。徳山ダムは総貯水量6億6000万トンという日本一の規模を誇るが、半分近い3億トンは用途のない「死に水」である。半分近い「死に水」をもつというのは異常である。1957年の計画浮上以来、何度も計画が再検討されながら、ダム規模の見直し(縮小)がなされなかったのは、発電落差を稼ぐためであるのに、ダム建設事業費に占める発電分は14%でしかなく、貯める水の量に比べて極めて小さい。さらに2007年にJパワーから権利譲渡を受けた際も、譲渡額は非公表で、他に買い手がないという有利な立場で「買い叩き」が行われたと推察できる。
これは一見中部電力の株主の利益であるように見えるが、国民の税金を自社の利益に注ぎ込み、それを非公表の壁で覆い隠すのであれば、最終的にはユーザーの理解を得られず、当社の発展にも弊害をもたらすことになる。
徳山水力発電所の事業費につき
①徳山ダムの発電事業の権利譲渡に要した費用
②水力発電所建設に係った費用(当初の予定額、発電所建設が当初予定より延びたことで係った増額分)
③ その他の費用(内容を明記して)
を明らかにされたい。
6.子会社シーテック社の南伊吹風力発電事業について
1)当社子会社シーテック社が、大垣市上石津町と関ヶ原町の境に計画している南伊吹風力発電事業に絡んで、警察から個人情報の提供を得て「反対運動をさせない」という相談をしていたことは、社会的にも大きな注目と批判を浴びている。証拠保全手続きを経て、シーテック社が作成した大垣警察署との「意見交換議事録」によって、シーテック社に大垣警察署に行くように示唆したのは当社岐阜支店であること、大垣営業所を通じてシーテック社から「意見交換」の報告を受けていることも明らかになっている。当社「CSR宣言」にある「あなたの行動は、自分の良心に従っていますか?」「あなたの行動は、社会の良識にかなっていますか?」「あなたは、周囲のコンプライアンス違反に目をつぶっていませんか?」「あなたの行動は、周りの人に堂々と話せますか?」を自ら踏みにじっており、極めて由々しい問題である。
警察と「反対運動させない」相談をしていたことが明るみに出たことによって、当然ながら、シーテック社に対する地域の住民感情は悪化し、シーテック社は、大幅な計画変更を余儀なくされていると聞き及ぶ。上石津町内のいくつかの自治会には「事業は中止する」と言って歩いているようであるが、その一方、新聞社の取材に対しては「中止ではない」と答えている(5月27日付け朝日新聞)。関係住民にとっても、上記の「警察との相談」で関係させられた市民にとっても、この「どうなるのか分からない。聞いても曖昧にしか答えない」という状態は、受け入れがたい。この際、はっきりと「中止/白紙撤回」とするべきである。子会社シーテック社の南伊吹風力発電事業で発電する電力の全量買い取りを約束している親会社の責任として、南伊吹風力発電事業「中止/白紙撤回」を明確にするべきと思うが、いかがか。
7.浜岡原子力発電所の再稼働について
1)牧之原市民のアンケートで、「原発を停止させておいたほうがよい」という人の割合が初めて50%を切ったという報道があったが、それでも「安全が確認されれば再稼動したほうがよい」という人は、その半分程度であった。
この間当社は必死で浜岡原発の再稼働のための宣伝を行ってきたと思われるが、一体いくら位の宣伝費をかけたのか。
明確に区別できない場合は、静岡県内だけをターゲットにした広報宣伝費(静岡新聞への広告、新聞地方版への広告、CMスポット、駅の展示物やポスター等)について金額又は普及開発促進費のうちの割合を明らかにされたい。
2)またこの先どれだけの宣伝費と時間をかけて、原発の安全性を宣伝していくつもりなのか。それが成功し、市民の大半に受け入れられるという見通しがどの程度あるのか。
3)安全性を宣伝したにもかかわらず、不幸にして事故に見舞われてしまった場合、どう責任を取れるのかお聞きしたい。
8.日本原電敦賀原発について
1)当社が今期敦賀原発からの買電契約に基づいて日本原電に支払った金額はいくらか。
9.志賀原発について
志賀原発は、4月27日に有識者会合による「敷地内破砕帯(断層)の評価書」が、原子力規制委員会に受理されました。評価書は、データ等の追加を求めているものの、断層に関する評価は「1号機原子炉直下にあるS-1,および2号機タービンの冷却用配管の下にあるS-2・S-6は、いずれも活動する可能性が否定できない」というものです。新規制基準では「活動性が否定できない断層は活断層とみなす、すわなちグレーはクロ」なので、志賀原発は1号機はもちろんのこと、2号機も再稼働はできない状況です。
そこで、当社と関西電力および北陸電力の共同開発である志賀原発2号機について、以下、質問します。
1)昨年度、志賀2号機の基本料金として、当社は北陸電力にいくら支払ったので
すか。
2)志賀2号機は2011年3月11日に定期点検に入り、そのまま停止しています。2011年度以降、まったく受電していないにもかかわらず北陸電力に支払った基本料金の総額はいくらになりますか。
3)当社と関西電力および北陸電力、三社による共同開発計画が締結された1996年当時とは、電力供給を巡る環境は大きく変化しています。しかも、志賀2号機の再稼働は非常に困難な状況です。
三社による契約は、速やかに解消すべきではないでしょうか。
少なくとも、解消に向けた協議をただちに開始すべきだと思いますが、当社の見解を明らかにしてください。
10.核燃料サイクル
1)再処理について
①これまで当社は、旧動燃、英仏の再処理事業者、日本原燃(3.2万t各社按分配分)に再処理を委託してきました。新たな再処理拠出金制度では、設置許可申請において再処理を選択すると、今後は使用済核燃料全量を再処理することが義務付けられます。更にMOX燃料関連費用も負担しなければならなくなります。再処理拠出金制度により、当社の「再処理等費用」の負担額は今まで以上に重くなるのではありませんか。
重くならないというのであれば、その理由を明らかにしてください。
②資源エネルギー庁によると、設置許可変更申請で再処理を選択しなければ、特定実用発電用原子炉設置事業者にはならないので、再処理拠出金制度の対象から外れるとのことです。電力自由化の競争下において、費用対効果のない再処理の選択が出来るのなら、再処理しないという選択をすべきではないですか。しないのは何故ですか。
③当社が今後も再処理を選択するというならば、今までの再処理が当社にとって如何に有用であったのかを、「再処理の実績と発電実績」から具体的に説明してください。
再処理の目的は核廃棄物処理ではなく、新たな燃料を作り出して発電するためのもの(故に使用済み核燃料は資産として扱われている)ですから、再処理等に掛かった費用で何kwの発電をしたのかという「費用対効果」は、再処理を今後も選択する理由の説明には不可欠です。
④ ③の費用対効果の説明の根拠となるデータとして、これまでの当社の再処理委託契約により、処理した使用済み核燃料の量(t)、抽出したプルトニウムの量(kg)、回収ウランの量(t)を、旧動燃、英仏再処理事業者、日本原燃それぞれについて明らかにしてください。
⑤ ④の量のうち、核燃料に加工したプルトニウムの量及び回収ウランの量、そしてその核燃料によって生み出した電力の発電量を明らかにしてください。
⑥海外の再処理によって分離された回収ウランは、どの会社にどのぐらいの量が保管されているのか。
⑦東海再処理工場で分離された回収ウランを再濃縮する際に発生した劣化ウランはどこに何トン保管されているのか。
2)高速増殖炉計画について
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」は、1995年のナトリウム火災事故以降、本格運転できない状況が20年以上続いている。運営主体であった原子力発電研究開発機構は、停止中の事故や度重なる点検漏れで、原子力規制委員会から2013年に「運転再開準備禁止令」、昨年は運営主体の交代を勧告され、現在、研究開発を引き継ぐ組織もない状態である。
①当社はこれまで、20年全く進展せず、計画の破綻が明らかになっている高速増殖炉開発を一貫して擁護し、その有用性を株主総会でも強弁してきた。ところが、国からの運営の引き受けについての協力要請にたいしては、電気事業連合会として断わっている。高速増殖炉開発の旗をふってきたこれまでの当社の姿勢を考えると、無責任である。運営主体の受け皿がどこも無い場合は、開発の中止も受け入れるということか。
②また、将来の見通しも甘く、安易に高速増殖炉開発を支持してきた過去の責任について、現在どのように考えているのか。
11.芦浜地点について
1) 37年間にわたる当社の芦浜原発建設への理解活動は、地元住民の激しい反対により失敗し、2000年に白紙撤回された。しかし当社は原発建設が困難と判断した地域にもかかわらず、広大な用地を所有し続け、16年間もの間、使いみちについては検討中としている。
これは当社が取り組んでいる経営効率化の保有資産のスリム化に反しないか
2)町民の不安を理由に南伊勢町は用地の町への寄付を申し出たが、当社は拒否をした。「みなさまに安心をお届けする良き企業市民」に反する行為ではないか
3)広大な用地を費用をかけて管理し保有するメリットは何か
4)使いみちの検討では「一団の土地であるので」「まとまった広さの土地となっている」ので検討中としているが、広さが必要な使いみちとは何か
5)芦浜は絶滅危惧種であるアカウミガメの産卵場所である。また、絶滅危惧種であるハマナツメの群落もある。社有地や電力施設周辺で絶滅危惧種の保護活動をしている当社として、芦浜での生物多様性の保全活動をどのようにするのか
6)トヨタ自動車は社会貢献活動としてアカウミガメの保護活動に取り組んでいる。
当社は生物多様性保全に取り組んでいるが、社有地である芦浜の絶滅危惧種に悪影響を与える行為を監視しているか
会社側一括回答
まず,「発電コスト」でございますが,当社の平成27年度の営業費用における送電端の電源別発電単価は、1キロワットアワーあたり,水力は5円48銭,火力は9円69銭,新エネルギー等は21円41銭でした。これには,支払利息および一般管理費等は算入しておりません。また,原子力につきましては,浜岡原子力発電所の発生電力量がありませんので,単価の算出ができません。
次に,「CO2の排出量」についてでございますが,平成27年度の実績は現在集計中ですが,浜岡原子力発電所の運転停止の影響などにより,1990年度対比で28パーセント増加し,約5,900万トンと見込んでおります。
当社は,最新鋭高効率発電機の導入など,CO2排出削減に努めておりますが,浜岡原子力発電所の運転停止の影響により,大幅な削減は困難な状況にあります。
当社は,電源の設備形成にあたり,特定の電源や燃料源に過度に依存しないよう,供給安定性,環境負荷特性,経済性,負荷追従性などを総合的に勘案し,各種電源をバランスよく組み合わせることが重要であると考えております。その中で,「石炭火力」は,供給安定性,経済性の観点から優れており,重要な電源であります。
なお,火力発電によって排出されるCO2を分離・回収・貯蔵する新技術,いわゆる「CCS」は,現時点では法整備面・技術面・コスト面などの課題があります。現在,国による調査・実証試験が進められており,当社もこれに協力しております。
CO2の排出量の削減にあたっては,国で示されたエネルギーミックスを踏まえ,原子力発電の継続的な活用や,再生可能エネルギーの推進など,バランスのよい電源構成の実現を目指すとともに,新電力を含む電力業界全体での取り組みを通じて,国の削減目標を達成できるよう努めてまいります。
次に「浜岡原子力発電所の安全対策および重大事故への対応」についてでございますが,浜岡原子力発電所におきましては,従前より自主的に地震・津波対策や重大事故対策に取り組むとともに,原子力規制委員会が策定した新規制基準を踏まえて,さらなる安全性向上対策を進めております。
また,万が一,重大事故が発生した場合に備えて,炉心や格納容器の損傷防止対策として、注水機能や電源機能を強化するとともに,放射性物質の放出を抑制するためのフィルタベント設備の設置など対策を進めております。
さらに,何らかの原因により発電所に災害などが発生したとしても原子炉を安全に冷温停止できるよう,必要な体制・手順・資機材の整備を行うとともに,現場で初動対応を行う「緊急時即応班」をはじめ各要員が、必要な資機材を手順どおり操作できるように,継続して総合訓練や個別訓練を実施しております。
「防波壁」につきましては,地震,津波に関する調査結果を踏まえ,不確かさを考慮した上で策定した「基準地震動」および「基準津波」に対して,敷地内への浸水防護機能が確保できるよう設計しております。防波壁は,岩盤の中から立ち上げた鉄筋コンクリート造の基礎の上に,L型の壁を結合するなど,ねばり強い構造で十分な耐力を有しております。また,南海トラフのプレート間地震による地盤の変動は,広い範囲に一様に生じるため,その傾斜は非常になだらかなものになると想定しております。表層地盤の変形,地すべり,液状化,洗掘などにより,その機能が損なわれることはないと考えております。
「敷地内の浸水防止対策」につきましては,万が一,津波が防波壁を越えて敷地内に浸水し,屋外の海水取水設備が機能を失った場合でも,原子炉の冷却機能を確保するため,新たに防水構造の建屋内に「緊急時海水取水設備」を設置するとともに,建屋等への浸水を防止するため,防水扉を設置するなどの対策を講じております。
「フィルタベント設備」につきましては,地震などの自然現象に対して十分な余裕を持たせて設置しており,また,同設備内のフィルタ装置は,鉄筋コンクリート造の地下構造式格納槽の中に設置していることから、頑健性が高く,放射性物質が漏えいすることもないため,二系統化する必要はないと考えております。
「重大事故発生時の水素対策」につきましては,原子炉が損傷し,水素が発生することを防止するため,注水機能や減圧機能を強化するとともに炉心損傷により水素が発生しても,格納容器からの漏えいを防止するため,格納容器の冷却機能を強化しております。万が一,格納容器から原子炉建屋に水素が漏えいした場合には,フィルタを通して水素を建屋外に排出いたします。さらに,ベント設備や建屋への放水を行う可搬型放水設備を設置し,敷地外に放射性物質が拡散することを抑制しつつ,建屋外に水素を排出する対策も実施しております。
次に,「浜岡原子力発電所5号機の海水混入事象に係る機器レベルの健全性評価結果」についてでございますが,当社は,原子炉圧力容器の内張り材を目視点検し,腐食の大きさ,発生箇所および密集の程度を確認したうえで,代表箇所の研磨や超音波検査を行いました。
腐食の深さは,内張り材と原子炉圧力容器の境界の溶接溶け込み部に到達しているものの,原子炉圧力容器は,必要な厚さを満足しており,継続して使用することができると評価しております。
「平成21年に発生した駿河湾の地震における5号機の設備健全性評価結果」につきましては,耐震設計トこ重要な機器・配管について,地震観測記録を用いた解析を実施し,機器・配管の健全性が確保されていることを確認しております。
なお,設備の補修状況などにつきましては,すべて当社ホームページにて公開しております。
次に,「浜岡原子力発電所に関する広報活動」についてでございますが,当社は,同発電所の安全性をより一層高める取り組みについて,見学会や対話活動をけじめとしたコミュニケーションの機会や,テレビ,新聞などによる情報発信を通じて,リスクを含めた情報をわかりやすくお伝えするとともに、みなさまの不安や疑問に一つひとつお答えし,一人でも多くの方にご埋解いただけるよう努めております。
「芦浜の土地」につきましては、まとまった広さの土地となっていることから,活用方法について,土地の特性や収益性などから引き続き検討しており,現時点では処分することは考えておりません。また、芦浜の生態系などの自然環境保全につきましては,専門家のご意見をお聞きするなど,十分に配慮しており,管理も適切に行っております。
次に,「他社との電力受給契約」についてでございますが,当社は,日本原子力発電の敦賀原子力発電所2号機からの受電電力を自社供給力とし,自社発電所と同等の扱いとしていることなどから,発電所の維持管理に必要不可欠な最低限の費用を負担する受給契約を締結しております。平成27年度の受給料金は215億円でした。
また,北陸電力殿とは,同社の志賀原子力発電所2号機から受電するため,電力受給契約を締結し,発電所の維持管理に必要不可欠な最低限の費用を支払っております。
次に,「原子燃料サイクル」についてでございますが,エネルギー資源の乏しいわが国におきましては,地球温暖化などの課題に対処しつつ,将来にわたり安定的にエネルギーを確保していくため,安全の確保と地域の信頼を最優先に,原子力を引き続き重要な電源として活用することが不可欠であります。こうした観点から,原子力発電に伴い発生する使用済燃料については,再処理して回収したプルトニウムおよびウランを有効活用することが重要と考えております。
今国会で成立いたしました「再処理等拠出金法」は,電力の小売全面自由化や原子力依存度低減などの新たな競争環境下においても,国策である使用済燃料の再処理などの原子燃料サイクルを着実かつ効率的に実施する仕組みを整備するものと承知しており,当社は,開法の趣旨にもとづき,今後も引き続き,原子燃料サイクルを推進してまいります。
「高速増殖炉サイクル」につきましては,エネルギー資源の獲得競争激化や資源の枯渇が懸念される中で,長期にわたるエネルギーの確保の観点から有力な選択肢であると考えております。なお,「もんじゆ」の実施主体については,今後,文部科学省にて適切に検討されるものと考えております。
その他、詳細にわたる事項や,競争上の不利益を招くおそれがある事項などについては,ご説明は差し控えさせていただきました。
中部電力株式会社 第91期定時株主総会 事前質問に対する一括説明
まず,「業績および配当」についてでございますが,浜岡原子力発電所全号機の運転停止以降,3期連続の赤字が続いておりましたが,平成26年度については電気料金の値上げや徹底した経営効率化の結果,4年ぶりに一定程度の黒字を確保することができました。
一方で,安全で安定的な電力供給や,電カシステム改革などを見据えた競争力強化のために必要な投資を行っていかなければならないことに加え,震災以降に毀損した財務基盤を回復させる必要がございます。
期末配当につきましては,これらを総合的に勘案するとともに,株主さまのご期待を踏まえ,1株につき10円をご提案させていただくことといたしました。今 後の配当水準については,招集ご通知20ページ記載の「株主還元に関する考え方」を踏まえ,経営効率化の進展状況を含めた財務状況,経営環境などを総合的 に勘案したうえで判断してまいります。なお,平成26年度の収支状況は,さきほどビデオの中でご報告したとおりでございますが,このうち,電気料金の値上 げによる売上高,収支の増加額は,1,270億円でした。
次に,「電力・ガスシステム改革への対応」に ついてでございますが,さきほど,「対処すべき課題」において,社長が申し上げたとおり,一層の競争激化を見据え,「お客さまのニーズを捉えた多様なサー ビスや料金メニューの提供」,「東京電力との包括的アライアンスを活用した燃料調達力の強化」,「中部地域以外における電気事業の展開やガス事業の一層の 拡大jなど,中部電力グループをさらに成長させていくため,競争力や収益力の強化に向けた戦略を立案・実行し,エネルギー市場の変化に的確かつ柔軟に対応 してまいります。
次に,「東京電力との包括的アライアンス」に ついてでございますが,今回のアライアンスは,東京電力と併せて世界最大級となるLNGの調達規模を活かした燃料調達価格の低減や火力発電所の効率運用の 実現という面で有効であるだけでなく,東京電力との共同開発により,関東地域に新規の電源を確保することができることから,総合エネルギーサービスの展開 や域外における収益基盤の拡大など,従来当社が掲げてきた成長戦略を加速させるうえでも有意義であると考えております。
今回のアライアンスの基本合意,新会社の設立,資産移管等の各プロセスにおいては,弁護士,税務・財務アドバイザーの助言・指導を踏まえて,経営会議,取 締役会における十分な審議を経たうえで実施しております。福島第一原子力発電所の事故などに関して生じる東京電力の賠償債務などについては,関係法令にも とづき,東京電力が負担するものであり,東京電力から独立した別法人である新会社「JERA」や当社が負担することはありません。なお,東京電力の事故対 応については,申し上げる立場にございません。
同社の既存火力発電事業のJERAへの統合については,今回のアライアンスの効果を確認しつつ,継続的に検討を進めてまいります。
次に,「大阪ガスとのシェールガスの共同調達」に ついてでございますが,米国からのLNG調達を目的とする「フリーポートプロジェクト」は,シェールガスを含む米国産の天然ガスを液化してLNGとして輸 出するというものであり,シェールガスの開発を行うものではございません。液化する原料ガスの調達にあたっては,長期にわたって安定的かつ経済的に調達が できるよう,調達源の分散化や貯蔵設備の活用などの方策を検討しております。
次に,「発電コスト」に ついてでございますが,当社の平成26年度の営業費用における送電端の電源別発電単価は,1kWhあたり,水力は5円78銭,火力は13円43銭,新エネ ルギー等は30円44銭となっております。この電源別の単価には,支払利息および一般管理費等は算入しておりません。また,原子力については,浜岡原子力 発電所が停止しており,発生電力量が無いため単価の算出ができません。なお,一般水力・揚水別の発電コストについては,競争上の不利益を招くおそれがありますので,ご説明は差し控えさせていただきます。
原子力発電コストは,本年5月,国の「発電コスト検証ワーキンググループ」において,1kWhあたり10.3円以上になるとの試算結果が報告されました。 この試算には,社会的費用として,立地交付金などの政策経費が1.5円,事故リスクヘの対応費用が0.3円以上として含まれております。また,仮に現状の 試算から廃炉・賠償費用等が1兆円増えると,事故リスクヘの対応費用は1kWhあたり0.04円増加することが示されております。なお,同ワーキンググ ループにおいては,石炭火力発電のコストは12.9円,LNGは13.4円など,他の電源の発電コストも示されております。
当社といたしましては,原子力は,コストだけでなくエネルギーセキュリティや地球環境問題などの観点から,今後とも重要な電源であると考えております。原 子力の事業環境整備については,国の審議会において検討が進められておりますが,当社といたしましては,電カシステム改革によって競争が進展した環境下に おいて,政策や規則などの変更かあっても,引き続き,民間事業者が原子力を担えるよう,国に環境整備を求めてまいります。
次に,「託送供給に関する収支」についてでございますが,平成26年度の送配電部門の収支は,本年7月末に公表予定です。託送料金については,昨年5月に見直しておりますが,見直し前である平成25年度の送配電部門の純利益は,382億円でした。
次に,「CO2の排出量」に ついてでございますが,平成26年度の実績は,現在集計中ですが,浜岡原子力発電所の運転停止の影響などにより,平成2年度,1990度対比で約30%増 加し,約6,200万トンと見込んでおります。当社は,最新鋭高効率発電機の導入など,CO2排出削減に努めておりますが,浜岡原子力発電所の運転停止の 影響により,大幅な削減は困難な状況にあります。
次に,「石炭火力発電」に ついてでございますが,当社は,電源の設備形成にあたり,特定の電源や燃料源に過度に依存しないよう,供給安定性,環境負荷特性,経済性,負荷追従性など を総合的に勘案し,各種電源をバランスよく組み合わせることが必要であると考えております。その中で,石炭火力は,供給安定性,経済性の観点から優れてお り,重要な電源であると考えております。
現在開発中の武豊火力発電所5号機の年間のCO2排出量は,稼働率が80%である場合,同規模の上越火力発電所2号系列の2倍程度の約600万tとなります。
CO2排出量の削減については,新電力を含む電力業界全体として,国の削減目標と整合的な枠組みを構築する必要があるとされており,当社も,その一員として,枠組み構築に向けた取り組みに参加してまいります。
火力発電によって排出されるCO2を分離・回収・貯蔵する新技術,いわゆる「CCS」は,革新的な技術ではあるものの,実用化に向けては法整備面・技術 面・コスト面などの課題があるものと認識しております。CCSについては,国による調査・実証試験が進められており,当社も協力しております。
碧南火力発電所につきましては,1号機の運転開始が平成3年と比較的新しく,現時点で具体的なリブレースの計画はありません。同発電所の石炭灰処分場は, 今後6年程度で埋め立てが完了する見込みであるため,武豊町地先において新たに処分場の開発を計画しており,現在,環境影響に係る調査を進めております。 武豊火力発電所5号機から発生する石炭灰は,原則として全量を,セメントの原料などにリサイクルすることを検討しております。
「石炭灰の放射性濃度測定」に つきましては,国が定めたガイドラインにおいて,1gあたり1Bqを超えるものが対象とされておりますが,当社の石炭灰については,過去の調査結果など から,この基準を超えることはないと考えられるため,測定は実施しておりません。なお,過去の調査の時期などについては,詳細にわたる事項であるため,ご 説明は差し控えさせていただきます。
次に,「太陽光・風力発電などの大量導入への対応」に ついてでございますが,平成24年に導入された固定価格買収制度に伴い,天候や時刻によって出力が大きく変動する太陽光発電が急激に増加しており,当社に おいても,設備面や運用面で様々な対応が必要となっております。現時点では,接続制限や出力抑制を要する水準には至っておりませんが,今後も大量導入が進 んだ場合は,さらなる系統対策や電源対策を講じる必要が生じてまいります。
固定価格買取制度については,国において制度見直しに向けた議論が重ねられておりますが,当社といたしましては,系統対策や国民負担の抑制といった課題に ついて十分な議論がなされるとともに,消費者や産業界をはじめ,社会全体の理解を得ながら進めていくことが重要であると考えております。
次に,「スマートグリッドなどへの対応」に ついてでございますが,基幹系統の送電網では,既に,情報通信技術を活用して,安定供給と経済性を両立させた「インテリジェントグリッド」が整備されてお ります。また,配電系統についても,スマートメーターや次世代機器の導入を通じて,安定供給の向上を図るとともに,お客さま一人ひとりのライフスタイルに 合わせたメニューの提供など,サービスの多様化と付加価値の向上を目指してまいります。
情報通信技術を活用した次世代地域ネットワークである「スマートコミュニティ,スマートシティ」につきましては,豊田市で実施された実証プロジェクトに参 画し,家庭内の電気の使用状況の「見える化」や,電気料金を変化させることによって得られる節電・省エネ効果の分析,家庭内エネルギー管理システム 「HEMS」の共同開発・検証を行うなどの取り組みを実施しております。
今後は,このプロジェクトで得られた知見を踏まえ,デマンドレスポンスを含めた将来のエネルギー需給の在り方などについて検討してまいります。
次に,「資材調達」についてでございますが,資機材・役務調達の競争比率の実績は,平成25年度は約20%,平成26年度は約24%でございます。平成28年度までに35%程度に拡大できるよう努めてまいります。
次に,「浜岡原子力発電所の安全対策および重大事故への対応」に ついてでございますが,浜岡原子力発電所においては,福島第一原子力発電所のような重大事故が発生しないよう,従前より自主的に地震・津波対策や重大事故 防止対策に取り組むとともに,原子力規制委員会が策定した新規制基準を踏まえて,さらなる安全性向上対策を実施しておりますが,万が一,重大事故が発生し た場合に備えて,炉心や格納容器の損傷防止対策として,注水機能や電源機能を強化するとともに,フィルタベントの設置工事などを実施しております。
さらに,何らかの原因により発電所に災害などが発生したとしても,原子炉を安全に冷温停止できるよう,必要な体制・手順・資機材を整備するとともに,要員 を確保しております。また,各要員が,必要な資機材を手順どおり操作できるように,継続して総合訓練や個別訓練を実施しております。
次に,「原子炉立地審査指針」につきましては,浜岡原子力発電所各号機の設置にあたり,大きな事故の誘因となるような事象について検討し,地震の際に大きな相対変位を生じる可能性のある活断層が原子炉施設の基礎岩盤に存在しないことや,火山の火口が敷地付近に存在しないことなどをもって,原則的立地条件を満たすことを確認しております。
当社は,これまでも最新の知見を踏まえて,浜岡原子力発電所の安全性の向上に取り組んでまいりましたが,震災以降に取り組んでいる対策も,その一環とし て,福島第一原子力発電所の事故の教訓や「南海トラフの巨大地震モデル検討会」による知見,新規制基準を踏まえて実施しているものであり,安全性の向上の ために必要であると考えております。
次に,「浜岡原子力発電所の防波壁」に ついてでございますが,防波壁は,基準津波に対して,敷地内への浸水防護機能が確保できるよう設計しております。防波壁頂部4メートルの嵩上げ部分につい ても,当該部分に作用する波力に対して浸水防護機能が確保できる構造としています。敷地前面の海底には,地形上,防波壁に影響を及ぼす巨大な岩石はないと 考えております。また,防波壁は,腐食防止のため,たて壁の表面をコンクリートパネルで覆うなどの対策を講じております。
南海トラフのプレート間地震による地盤の変動は,広い範囲に一様に生じるため,その傾斜は非常になだらかなものになると想定しており,また,防波壁は,幅12メートルごとに独立した構造としていることから,地震に伴う地盤の隆起により崩壊するようなことはありません。
次に,「ストレステスト」に ついてでございますが,福島第一原子力発電所の事故後,旧原子力安全・保安院は,欧州諸国で導入されたストレステストを参考に,国内原子力発電所について も実施を求めておりましたが,平成25年7月に,原子力規制委員会により新規制基準が策定されました。当社は,現在,浜岡原子力発電所3,4号機につい て,新規制基準への適合性確認審査を受けております。
クリフエッジは特定しておりませんが,原子炉建屋,圧力容器等の主要施設は,大きな設計裕度を持たせていることから,基準地震動に対して余裕のあるものになると考えています。ダウンカマ露出事象の評価については,原子力発電所耐震設計技術規程上,不要とされております。
「非常用炉心冷却装置」につきましては,原子炉冷却材の喪失事故を模擬した各種実験において,燃料は損傷することなく冠水・冷却されることが確認されております。
次に,「新野川からの取水など」についてでございますが,当社は,新野川の伏流水を,数日間隔で取水しており,平成26年度の取水量は約33万5,000立方メートルでした。取水ポンプの能力は毎時約75立方m,タンクの容量は合計3万5,000立方mです。
当社は,昨年の第90期定時株主総会において,新野川の流量は,渇水期において,毎時約1,680立方メートルである旨説明いたしました。同流量は,浜岡 原子力発電所の通常運転時に使用する補給水,雑用水等の使用量を評価するために,昭和54年から55年にかけて実測した流量をもとに評価したものであり, 浜岡原子力発電所1号機建設時の設置許可申請書に記載したものとは異なっております。
また,3号機取水用試掘トンネルには,淡水を貯蔵しております。揚水可能な最低水位は,およそ海抜マイナス30mです。
次に,「浜岡原子力発電所敷地内の地下水」に ついてでございますが,当社は,敷地内の地下水の汲み上げを行うサブドレン設備を,全体で42箇所設置しております。原子炉建屋周辺のサブドレン設備の排 水量は,3,4,5号機それぞれ1日あたり30tから40t程度です。なお,汲み上げる地下水の量は,降雨の状況や設備の配置位置、数などにより変化いた します。サブドレン設備による汲み上げをしない場合など,仮定の話については,お答えできません。
次に,「原子力発電所の廃棄物の再利用」に ついてでございますが,浜岡原子力発電所5号機のタービン動翼の一部については,クリアランス制度のもと,原子力規制委員会から放射能濃度の確認を受け, 再利用先について検討しております。1・2号機の廃止措置で発生するクリアランス制度の対象物については,今後,原子力規制委員会に対して,放射能濃度の 測定方法などについて認可申請する予定です。
次に,「他社との電力受給契約」についてでございますが,日本原子力発電に対する平成26年度の受給料金は,敦賀原子力発電所の維持管理に必要不可欠な最低限の費用に限定しており,260億円です。
また,北陸電力とは,同社の志賀原子力発電所2号機から受電するため,電力受給契約を締結し,発電所の維持管理に必要な費用を支払っておりますが,金額等の詳細につきましては,相手方もあることから,ご説明は差し控えさせていただきます。
同2号機からの最大受電量は,平成18年3月の運開から平成18年度までは40.7万kW,平成19年度から平成22年度までは31.4万kW,平成23年度以降は,26.7万kWでございます。
志賀原子力発電所については,原子力規制委員会の今後の動向を見守っていきたいと考えております。同発電所の存廃など,仮定の話についてはお答えできません。
次に,「蓄電技術などの研究開発」に ついてでございますが,当社は,蓄電池そのものの開発は行っておりませんが,電圧・周波数等の電力品質を適切に維持するための蓄電システムの設置方法など の研究や,落雷による瞬時電圧低下を補償する装置に加え,蓄電容量の向上を目指した次世代キャパシタの開発にも取り組んでおります。
超電導に開する研究については,超電導技術を応用した瞬時電圧低下補償装置の実用化にとどまらず,超電導電力機器の低コスト化に資するコイルの高性能化に向けた研究開発にも取り組んでおります。
水素発電については,経済性等の課題はあるものの,低炭素化に資する技術であることから情報収集・検討を継続してまいります。
燃料電池については,従来から研究開発を進めてまいりましたが,設備導入コストが依然として高いことなどから,今後は,技術開発の動向を踏まえ,必要に応じて開発を進めることとしております。
次に,「シーテックの業務情報の漏えい」に ついてでございますが,シーテックは,業務運営上の必要性から警察と情報交換を行ったものでございますが,その業務情報を外部に漏えいさせ,多くの方にご 心配をおかけしたことは,誠に遺憾であります。シーテックをはじめグループ各社に対しては,情報管理を徹底するよう指導を行っております。今後も引き続 き,適正に管理されているか確認してまいります。なお,当社は,社員が保有していない専門的な知識や経験を持った人材として,警察出身者などを,若干名, 雇用しております。
「コンプライアンスの推進」につきましては,当社では,定期的に実施しているアンケート等により,コンブライアンスの定着・浸透の度合いを測りながら,従業員一人ひとりの意識の向上・実践の促進に資する施策に取り組んでおります。
次に,「相談役・顧問」に ついてでございますが,当社は,昭和26年の会社創立時から,その役職を置くこととしており,現在,7名の方に相談役・顧問をお願いしております。それぞ れ経営全般にわたる課題や経営上の個別の課題などに対し,識見や経験に基づいた適切なアドバイスなどをいただいているほか,社外で行われる会合などにも当 社を代表して出席いただいております。また,本日付で,新たに三田取締役が相談役に就任する予定でございます。
相談役・顧問に対しては,その職務等に応じた報酬を支払っており,お手もとの招集ご通知27ページ,損益計算書の「一般管理費」に含まれておりますが,その金額については,過去分も含め,詳細にわたる事項ですので,ご説明は差し控えさせていただきます。
次に,「社宅の跡地などの不動産の活用方法」についてでございますが,当社およびグループ会社が保有する不動産については,今後も必要性や収益性等を勘案して売却・賃貸するなど,保有資産のスリム化,有効活用を図ってまいります。
「芦浜の土地」につきましては,当時の計画地の大半を取得し,まとまった広さの土地となっていることから,具体的な活用方法について,土地の特性や収益性などから検討しており,現時点では,処分することは考えておりません。
また,芦浜の生態系などの自然環境保全については,専門家の意見をお聞きするなど十分に配慮しており,定期的な巡視,山林の間伐・つる切り・下草刈りなど山林の管理を適切に行っておりますが,その費用などの詳細につきましては,ご説明は差し控えさせていただきます。
最後に,「株主総会の運営」についてでございますが,株主総会は,株主のみなさまによる会社の意思決定機関でございますので,ご質問に対する適切な説明,適法かつ合理的なご審議がなされるよう,会社法の趣旨に則り,適正かつ効率的に議事を進めております。
株主さまからのご質問および指名につきましては,議長の議事整理権にもとづき,多数の株主さまにご発言いただけるよう,お一人一問ずつ,要点を簡潔に述べていただくようお願いしております。また,株主さまからのご提案の趣旨説明につきましては,議長の議事整理権にもとづき,提案内容,提案理由の補足説明のため,時間の制限を設けたうえで行っていただくこととしております。
なお,株主総会の開催日につきましては,従来より決算事務や監査日程等を考慮して決定しており,他社と協議することはございません。
以上
2015年(第91期)中部電力株主総会 事前質問書
◆取締役OBの役職について
当社と同じ一般電気事業者である他社では、取締役OBについて「顧問」などの名目で多額の報酬を支払っていたことが明らかになっている。
1.当社は、取締役OBについて、どのような役職を設けているのか。「相談役」「顧問」など、その名称と役割を明らかにされたい。
2.前項について、何年からその役職を設けたのか。また、昨年度、今年度の人数を明らかにされたい。
3.取締役OBに対しては、会社として報酬を支払っているか。
4.取締役OBに対する報酬額の費目は何として計上されているのか。
5.報酬を払っている場合は、その過去から現在に至るまでの総額(何年間でいくら)を明らかにされたい。
◆当社及び子会社と警察との関係について
1. 昨年7月24日付け朝日新聞名古屋本社版で大きく報道された岐阜県警大垣警察署による市民監視事件。
中部電力子会社である(株)シーテックが大垣警察署警備課(公安部門)と少なくとも4回に渡り、事業に反対するかもしれない市民を「自然に手を入れる行為自体に反対する人物である」「このような人物とつながるとやっかいになる」などと名指しし、病歴や学歴や家族の社会的位置などの個人情報などをやりとりしていた。大垣警察署との意見交換を記録した(株)シーテックが作成の「議事録」は証拠保全手続きを経て当事者が入手している。
それによれば、中電大垣営業所経由で中電岐阜支店広報I課長より、大垣警察署警備課が「南伊吹風カの事業概要情報を必要としている」旨の連絡をし、その報告を受けている。
当社は、この事件に深く関与しており、当事者から事実解明と謝罪を求める「抗議・要求書」が出されている。
これに対して当事者は何の回答も受け取っていない。
①事実の調査を行っているのか。
②行っているのであれば、当事者に何の連絡もしていない理由は。
③事実調査を行わないのであれば、その理由。
④当社が公表している「コンプライアンスに関する基本方針」に照らして著しく問題があり、当社及びグループ企業への信頼を傷つける事案と考えるがいかがか。
⑤この事案及び同様事案に対して、今後どのように取り組むのか。
2.警察の公開資料により、警察OBが当社及びグループ会社に再就職していることが判明している。
①過去に合計何人の警察OBの再就職を受け入れたか明らかにされたい。
②また、現在在職中の警察OBの人数は何人か。
◆発電コスト・発電実績・発電設備等
1.当社の2014年度の主要電源別の発電コストを聞きたい。なお、水力は一般水力と揚水に分けて示してほしい。
2.当社の2014年度の二酸化炭素総排出量、および、その1990年度比の増減はどれだけであったか。
3.当社の2014年度の二酸化炭素排出実績を、二酸化炭素排出削減に関するこれまでの当社の言明との関連でどのように評価しているか。
4. 原発の発電コストは、内部コスト(電力会社が負担するコスト)だけでなく、外部コスト(電力会社が負担していないコスト。その最大のものが、過酷事故のコスト)も加えると、火力発電よりはるかに高く、風力発電はいうまでもなく、現状の太陽光発電よりも高くなるのではないかと、言われている。企業の社会的責任の完遂を標榜している当社として、原発の外部コストに無関心でいることは許されないはずだ。そのことを踏まえて、
① 当社は、原発の外部コストはどれほどの大きさになると認識しているか。
② 当社は、外部コストを含めても原発は低コストの電源であると考えているのか。
③ コストの大きな部分が外部化されている原発は、競争条件が不当に有利化されており、自由な市場経済になじまないという意見がある。この意見をどう評価するか。
5.昨年の値上げ申請の際の競争発注に関する資料では、24年度実績の特命発注が71%あったとある。特命発注の25年度、26年度の実績は何%か。金額ではいくらか。
6.競争発注の実績は25年度、26年度は何%であったのか。また、その金額はいくらか。
7.当社は、東京電力と共同で新会社JERAを設立する計画であるが、発電施設の新会社への移転については協議中であると報じられている。
一方、東京電力には、既に東北電力と、新地火力、勿来火力など共同出資する発電所があるが、これらの扱いについては、東京電力単独開発の火力発電所とは異なる扱いになるのか。
8.これまでに当社が運営する発電プラントで他社と共同出資しているプラントはあるか。あるとすれば、どの発電所か。
9.前項に関連し、共同出資または共同開発している発電設備のうち、当社以外が運営しているものはあるか。あるとすれば、どの会社の何と言う発電所か。
◆石炭火力発電所について
1.武豊火力発電の石炭化について
① 計画されている出力100万kwの石炭火力が稼働した場合、年間の二酸化炭素排出量はどれほどになるか。それは、ほぼ同出力の上越火力2号系列(LNGコンバインドサイクル。出力115万kw)の排出量と比較して、どれほど多いのか。
② 石炭火力設置にあわせて武豊にCCS導入を検討しているという報道があるが、本当に検討しているのか。
③ 当社の2013年度の二酸化炭素総排出量は1990年度比で約40%も増加している(2014年度も大きな変化はないだろう)。この事実を直視するならば、CCSを併設しない石炭火力を新たに設置することは許されないと考えるが、どうか。
2.碧南火力発電所(日本最大のCO₂排出事業所)が次第に老朽化しているが、リプレースの検討はなされているのか。碧南火力発電所の石炭火力は順次廃止し、LNGコンバインドサイクル発電に置き換えていくべきだと考えるが、どうか。
3.碧南火力で出る石炭灰の全量は101万トン、韓国や香港に輸出されたり、セメントの材料や埋め立てに使われています。また、一部は碧南火力前面の埋立処分場でも処分され、さらに武豊でも埋立て処分計画があります。
石炭灰には、ウラン・トリウムの放射性物質が含まれており、電気事業連合会の調査でも最大200Bq/kgという測定値が出ています。
①石炭灰中の放射性ウラン・トリウム濃度について、もっとも最近調査したのはいつですか。
②また、その時の単位重量当りの放射能量を明らかにしてください。
③その後、石炭の調達先は変更していませんか。
◆日本原電、北陸電力との契約について
1.日本原子力発電の敦賀原発、北陸電力の志賀原発の維持費として昨年度支払った額を明らかにされたい。北陸電力への金額について、他社では公表しているので当社も明らかにすること。
2.志賀原発からの受電契約について、当社が受電できる最大電力量は何万kWまでか。また、その受電量は、契約時からこれまで変更はあったか。あったとすれば、何年に何万kWから何万kWになったのか。
3.志賀原発2号機について、昨年の値上げ申請に係る資料「中部電力株式会社の供給約款変更認可申請に係る査定方針」(平成26年4月)P.30には、「1 発電電力量の全量を受電会社に供給することとしているなど当該原子力発電所は契約の相手方との共同開発であると認められる。 2 このため、人件費、修繕費や減価償却費等の原子力発電所を安全に維持管理 する費用や、将来の稼働に向けた投資に要する費用についても、自社電源同様、負担する義務があると考えられる。」との記述がある。
①志賀原発2号機については、当社、関西電力、北陸電力3社による「共同開発」なのか。「共同開発であると認められる」とは、具体的にどのような協力関係にあることなのか。
②志賀原発2号機について、1996年の北陸電力、関西電力との契約のうち、負担金額や受電量などに関する内容を初めて公表したのはいつか。
③志賀原発2号機の存廃について、当社の意向は反映されるのか。
4.経営の悪化している関西電力も含めた3社との共同開発は、当社においてデメリットの方が大きいのではないか。
5.原子力規制委員会により、志賀原発1号機だけでなく2号機についてもタービン建屋や冷却水を供給する配管の直下の断層の活動性が指摘された。このように危険な原発を動かすことは、当社にとってもリスクが大きい。また、当社の消費者の電力のために志賀原発周辺の住民に事故対応への労力や予算を使わせ、不安を与えることは倫理にもとる。従って、志賀原発の廃炉を当社は北陸電力に申し入れるか、契約を解消すべきだと考えるがいかがか。
◆放射性廃棄物について
1.事故で破損した浜岡5号機のタービン回転翼の一部について、原子力規制委員会から放射能濃度規制の確認を受けて、クリアランスレベル以下の廃棄物として再利用できることになった。また、浜岡原発1、2号機の廃止措置などで出て来たクリアランスレベル以下の金属も既に存在している。当社は、これらのクリアランスレベル以下の金属廃棄物について、再利用先を把握しているか。
2.クリアランス制度を導入するにあたり、再利用は原子力関連施設内で利用することとされていたが、それは守られているか。
3.今後も認定されて出て来るものについては、どのような再利用先を計画しているのか。
◆浜岡原発事故の事故時対策について
1.福島第一原発事故に関する政府事故調査委員会の吉田昌郎所長の調書によると、事故直後のプラント維持に必要な人員は400名と定められていた(吉田調書020)にも関わらず、2011年3月15日早朝には、当時の吉田所長による第一原発近辺の線量の低い所への一回退避という指示とは異なり、所員9割(720名中650名)が福島第二原発へ避難するというが起きた。(吉田調書077−1−1)そのため、その間プラントの非常に重要なデータの取得に失敗している。更に実際、下請け会社の中には、福島第一原発に戻って作業するようにという東電の依頼を拒否したところもあることも判明している。
浜岡原発において、放射能を漏洩する重大事故発生時のプラント維持に最低必要な人員は何名としているか。事故機の数で幅があるのなら1基から3基までについてそれぞれ明らかにされたい。(これは法令に定める限度内での被ばく量を前提とした人員であり、次項の決死隊とは別。)
2. 当社は浜岡原発の再稼働を目指しているが、原発にはサイト外への大量の放射性物質放散を伴う過酷事故が発生する危険性がある。そうである以上、会社にはそれに備えておく義務がある。その備えの一つとして決死隊の準備がある。過酷事故が起きれば、事故拡大抑止のために大量被曝を覚悟で作業することが必要な状況が生じうるからである。そういう作業を命令する覚悟、そういう命令に従う覚悟がなければ、原発を運転すべきでないことは自明である。 以上のことを前提にして、
① 当社にはいざという場合に決死隊を使う覚悟はあるのか。
② いざという場合に決死隊を使うには事前の(過酷事故発生以前からの)十分な準備が必要だが、当社ではそれは現在においてどのように行われているのか。またこれからどのように行う予定か。
◆浜岡原発(地震・津波対策)
1.防波壁は鋼板製の箱を積み上げて、ボルトで組立てた構造である。
幅(厚さ)は下部から上部まで2メートルである。最高の津波の際に下部に生ずる曲げモーメントによって鋼板にかかる応力はいくらか。
また、その際、組み立てボルトと孔の周辺の鋼板は剪断と面圧に耐えられるのか。(津波は何波も繰り返し押し寄せる)
2.追加工事で4メートル嵩上げした部分はひ弱な構造になっているが、塑性変形を許容した設計にしている理由は何か。
3.津波は海底の土砂や岩石を巻きこんで押し寄せる。浜岡のような遠浅の海岸では多発する。巨大な岩石の衝突の力で鋼板は破れるのではないか。何キログラムまでの岩石に耐えられるのか。(宮古市では推定140トンの岩石が打ち上げられている)
4.潮風にさらされる鉄製の防波壁にとって、最大の敵は錆である。塗装仕様(塗料の種類、塗装方法など)とメンテナンスの方法を明らかにされたい。
5.南海トラフ地震の際に、最大2.5メートルの地盤の隆起があるといわれている。総延長は1.6キロメートルあるので、どこかで津波が来る前に防波壁が崩壊する可能性があるのではないか。
6.浜岡原子力発電所3号機、4号機、5号機についてストレステストは行ったことがあるか。
7.ストレステスト実施の有無に関わらず、浜岡原発の地震動に関するクリフエッジはそれぞれ何ガルか。
8.浜岡原発の3、4号機の格納容器は、欠陥が指摘されているマークⅠ改良型であるが、地震時の圧力抑制プールでのスロッシング現象により、ダウンカマが水面から露出し、蒸気の凝縮に失敗した場合の圧力上昇とスロッシングによる荷重の増加が重畳する場合について解析と評価を行っているか。行っているとすれば、どのような解析と評価を行っているのか。それに関する報告書は何と言うもので、何年に行われたものか。
◆浜岡原発(冷却水・地下水など)
1.昨年の株主総会で、緊急時の冷却水に使用する新野川の水量は、渇水期に1時間あたり1,680㎥との回答であった。設置許可申請書では、「新野川の平水量は、0.3㎥/s~0.5㎥/s程度(推定)」(1,080㎥/h~1,800㎥/h)とあり、なぜ渇水期で1,680㎥/hとなるのかを具体的に説明されたい。
2.設置許可申請書によれば、浜岡原発で使う諸補給水・雑用水・飲料水は新野川流域の地下水を敷地の北方約1kmの地点で揚水して使う計画とあり、揚水可能量は約3,000㎥/日程度とある。緊急時に要する水について、新野川の表流水ではなく、伏流水を汲み上げて使うということか。それとも両方利用するということか。
3.また、汲み上げは常時行っているのか。タンクに貯蔵している場合は、そのタンクの容量、また揚水ポンプの能力を明らかにされたい。
4.地下水位について昨年の株主総会でも質問しましたが、再質問します。
①浜岡原発敷地の地下水位は、地表面から深さ20メートルとのことですが、サブドレインによる汲み上げをしない場合については、何メートルになるのか。或いは、汲み上げにより何メートル下げているのか。
②常時地下水の汲み上げを行っているサブドレインは、敷地全体でに数十箇所設置されているとのことであるが、具体的な本数は何本か。(数十箇所では幅が広すぎるので)
③サブドレイン全体で1日(24時間)に汲み上げている地下水の量は何トンですか。具体的な数字で示されたい。
④昨年の株主雄会では、重大事故時の収束に要する代替水源として、3号機取水用試掘トンネルがあるとの回答があったが、その水源は何か。また、揚水可能な最低水位はT.P.何メートルか。
5.村主進著「原子炉安全工学」日刊工業新聞社1975年刊の本があり、これによるとECCSの実験をしたところ、炉心は冷えず蒸気が逃げてしまい、水位も保てなかったとあります。うまくいった実験はありますか?
◆芦浜地点について
芦浜原発計画は37年間にわたり地元住民を分断し苦痛を強いるものでした。しかし、住民は屈することなく計画を押し返し、当社は2000年に断念した歴史があります。
ところが、その後15年間は核関連施設が造られるのではとの不安から寄付や売却を希望する地元の声を無視し、一団の土地等であるからとの理由で当社は保有しつづけています。
1.芦浜は具体的な活用方法の無いまま15年も経過し、固定資産税や管理費など余分な経費がかかっています。
いつまでこの状態を続けますか?
2.当社は一団の土地等であるからとの理由で保有し続けていますが、この文言では説明責任を果たしていません。保有する理由を説明してください。
3.芦浜には保護上重要な野生生物が多数生育しています。当社が認識している保護上重要な生物を明らかにして下さい。
4.当社が実施しているとされる定期的な巡視,山林の間伐,つる切り,下草刈りなど,山林管理の作業員は、芦浜に生息する保護上重要な動植物の保護に関して、どこに何があるのか周知されていますか?
5.山林管理の作業は昨年何回実施されたのか?
その作業の評価はされていますか?
費用は年間いくらかかっていますか?
6.当社は1994年4月に、公有地である堤防より海側のハマナツメ62本を無断で採取し移植実験を行いましたが、現在どうなっていますか?データは取得されていますか?
7.今年5月14日の報道によれば、芦浜は高さ30m以上の津波が襲うことが明らかとなった。調査にあたった専門家によれば、これまでは300年前の宝永地震が最大とされてきたが、今回の調査によりそれをはるかに超えるレベルとなり、今後必ず起きると述べている。そのような場所に今後原発はもとより、他の構造物等を建設することは、非常にリスクが大きい。このような土地を保有し続けることにどのようなメリットがあるのか。将来の用途があるとすれば、それは何か。
◆株主提案に対する取締役会の意見について
1.第6号議案「浜岡原子力発電所の立地不適宣言」の章の定款新設の提案に対する取締役会意見の中に、「原則的立地条件を満たすことを確認しております」と記載がある。この「満たすことを確認している」というのは、誰が(どこの何と言う機関が)何時、確認したのかを明らかにされたい。(地震に関する知見が不十分な20年近く前の5号機増設時の設置変更許可は、無効になった。)
2.前項について、当社としては、安政東海地震、宝永地震、及び内閣府が検討している南海トラフ巨大地震は、過去及び将来において大きな事故の誘因となるような事象には当らないとの認識か。
だとすれば、地震・津波への対策をことさら講じる必要はなく、2011年以降耐震・対津波工事に支出している費用は、本来は必要がない費用だとの認識なのか。
3.第4号議案「コンプライアンスの徹底」の章の定款新設の提案に対する取締役会意見に述べられた「コンプライアンスの推進に務めております」というのは、目標を定め、達成度を検証しているのか。現実に、浜岡原子力発電所や静岡支店では、地元住民を含む市民が要請(抗議ではない)に赴いても、玄関より中に入れないなどの異常な対応をずっとしてきている。そうしたことが一向に改められる気配がない。本当に努力をしているのか。
◆新代表取締役社長について
本 総会において代表取締役社長に勝野哲氏が選出される運びとなっています。社長は当社を代表する「顔」です。電力小売全面自由化や送配電事業の法的分離が検 討される中で、社長の経営方針と共にその人間性が消費者、株主、従業員からこれまで以上に大きな注目を集めることが予想されます。
そこで、勝野氏にお尋ねいたします。
・当社に入社した動機は何でしたか。
・これまで40年近くに及ぶ社員生活の中で最も忘れがたい思い出や印象に残る出来事がございましたら、お聞かせください。
・当社は井上五郎・初代社長が戦後の電力不足期に井川ダム建設の陣頭に立ち、「井上五郎ダム」と名を残しています。
また私の居住する町内では、長く当社に勤務した藤田卓次氏が退職後は静岡市議会議員5期、市議会議長を務め、引退後は町内の老人会のリーダー役を果たされました。
さらに友人の一人は、当社定年退職後、社会福祉のボランティアとして深夜、早朝にわたって悩みを抱え眠れぬ夜を過ごす方の相談相手として尽力されています。
このように、当社は電力供給という社会性の高い事業を営むだけでなく、地域社会に根ざし人々を影で支え篤い信頼を集める人材を実に多く輩出してきました。
地域の人々とともにあり地域の信頼を得、地域を支え地域から支えられて公共性の極めて高い事業を展開してきた当社の伝統を踏まえ、勝野氏は、地域社会の人々とどのようにして、互いに顔の見える信頼関係を築いていこうとされているのでしょうか。ご所見を伺いたいと思います。